自分の流産・早産の体験から、人の心身の健康をテーマに表現活動に取り組む女性アーティストの初著作。 前半では、子宮脱落膜ポリープが引き金となった(と考えられる)自身の流産・早産の経験が語られます。子どもを喪った衝撃と深い悲しみの中で、作者は自分なりの振り返りを行い、これまで妊産婦の間で常識と考えられてきたことや、医療行為における人権問題にも意識を向けていきました。自分の中に生まれる疑問を一つずつ確かめるように論文を読み解き、身体の改革にひたむきに取り組む姿は、悲しみに正面から向き合い、起きてしまったことへの原因を探っていく葛藤のドラマでもあります。その体験を通じて、作者は次第に能動的な立ち位置からこの問題を考えるようになっていきます。後半では妊娠・出産という”女性”特有のテーマにおいてこれまであまりなかった語り口が、不妊治療を受ける友人を皮切りに、妊娠・出産に関わる専門家たちへの興味深いインタビューとなって、作品に収録されています。 本書に書かれていることはある妊娠・出産にまつわる経験のたった一例であり、当然のことながら同じ経験をされた方の声を代弁するものではありません。これまで個々の女性が人知れず背負ってきた妊娠・出産にまつわるすべての経験が、どれ一つとして否定されることなく、語れる世の中になることを切に願いながら、この本を出版しました。
1988 年、新潟県生まれ。 東京藝術大学卒業。博士(文化財)。 大学院で釉薬の研究を行ったのち、妊娠と出産の経験から、 人の心身の健康をテーマにアーティスト活動を行うようになる。 その手法は陶芸をはじめ、文章や映像など。